資生堂は、2005年に「一瞬も 一生も 美しく」をコーポレートメッセージとして定めて以来、「最高の美」に挑み続けるという姿勢を広告コピーに込めてきた。創業142年目となる2014年の新聞広告では、前年に引き続きモデルの水原希子が「顔」に採用され、コーポレートカラーの「赤」を背景に、これまでにない大胆なビジュアルで、「革新」の精神をより強く打ち出した格好だ。さらに、「美しさに答えはあるのか。何度でも挑み続けろ。」と強く訴えかけるキャプションが添えられ、これまでの「一瞬も 一生も 美しく」シリーズは、「お化粧をする。私はここにいる。」(2012年)、「わたし、開花宣言」(2013年)といったようにやや抽象度が高く模範的なコーポレートメッセージに留まっていただけに、ビジュアルとコピーの両方で具体的で直截なメッセージを強く打ち出した印象を受ける。
もう一点、モデルであるメイクにも大きな変化が見られることを見逃してはならない。これまでも,資生堂の企業広告でも時代を代表する人物をモデルに据えてきてはいるものの、ナチュラル志向のメイクに留まっていたが、今回の水原希子に施されたメイクはそれらと一線を画するものである。また、個別のブランド広告では蛯原友里や伊東美咲といった面々にメイクの真髄を宿してきたが、やはりそれらの実用的なメイクとも今回は異なっている。
インパクトのある広告は、それ自体が見る者の記憶に強く刻まれることになる。水原に期待されるのは資生堂のブランドイメージを担う「ミューズ」としての役割(1)なのかどうかはともかく、2014年6月に次期社長の就任を控える資生堂が変革の時を迎えようとしているのは間違いなさそうだ。
(1)わが国における化粧品広告の場合,特定のミューズにイメージを集約させた事例がそれほどないのが現状であり、むしろ多様なアイコンを用意することで「私たちの“なりたい顔”は、ひとつじゃない!」(VERY,光文社)との訴えに応えてきた。「気分によって着たい服も、なりたい顔も、つけたい香りも変わります。 いつだって“かわいい”はひとつじゃ
一方,外資系資本の化粧品メーカー(ブランド)には、たとえばLancômeのイザベラ・ロッセリーニやジュリアロバーツがそうであったように、その時代を代表する人物がミューズに選ばれることはけっして珍しくない。また、国内に目を転じても、POLA「B.A」の米倉涼子のようにブランドイメージを印象づける存在がまったくないわけではなく,本格的なミューズ擁立の試みとしては、マックスファクター「SK-II」の桃井かおりが挙げられるが、現在のSK-IIは桃井のほかに、綾瀬はるか、小雪、ケイト・ブランシェット、ケイト・ボスワーズを含めた合計5人をミューズに採用している(B.Aは米倉と夏木マリの二人)。ちなみにSK-IIは公式に「ミューズ」の呼称を自らのブランド戦略に使用している。
以下は歴代の企業広告
なお、水原希子は、資生堂の主力メーキャップブランド「マキアージュ」の顔として、1月21日(火)より、TVCM、雑誌広告等に登場する。