秋葉原はけっしてAKB48とアニメ、PCの街だけではない。この記事ではそんなアキバの限定的なイメージの払拭と高度経済成長期に世界一の電気街だったアキバがまだ僅かであるが存在することを、写真と共にルポタージュしていきたいと思う。
アキバの電気街口を出て歩くこと約20秒の一等地に、オーディオ部品からPC部品、盗聴器まで部品を売る店の数々にたどり着く。しかも、お洒落カフェなどが入るアトレの駅ビルの隣に立地しているというのだから面白い。
以下では,読者の方々が手に取るようなガイドブックにはおそらく載らないアキバのカオスの写真を多数掲載していく。まず下の写真を見てほしい。
狭い階段を上って二階に行ってみた。まずはビンテージのスピーカーユニット(これだけでは当然まともな音は出ない)を発見。なんと35000円の値が付いている。実はこの商品は高度経済成長期のただ中に三菱電機がスピーカー(DIATONEブランド)を作っていた時に渾身の力を入れて作り上げた名作スピーカーユニットである。今となっては、どのメーカーもこんなマニア向けの商品を作ったっところでかかるコストと売り上げが見事に反比例するから絶対に作らない。だから希少性の分、ビンテージの値段がプラスされることとなり、35000円というけっこうな金額になるわけである。
次は中古の携帯型のトランジスタラジオ。誰が買うのかまったく見当つかないが、立派に陳列されていて、それもけっこうな値段がする(3000円~5000円)。
また右の写真は真空管アンプの組み立ってキット。おそらく中国製のものだろうが、iPod世代には逆に新鮮に感じるのではないだろうか。組み立てには少々の電子工作の技術が必要だろうが、これはあくまで初心者向けのキット。値段は25000円くらいだったかな…。下の写真はビンテージ真空管ラジオ。これも立派な商品として売っている。逆に今となっては目新しいデザインだからミッドセンチュリー風の部屋のインテリア等として使えるかも。実際に使用するかどうかは完全に好みだけど…
アキバの歩道橋を渡るところからカオスが始まる。右手にオーディオ全盛期から今日まで,一部のオーディオマニアから聖地と言われている「ラジオデパート」がある。そして左手に電源パーツの製造から事業を始め、いまや様々な関連アクセサリーを売る「オヤイデ電気」があり、これらはオーディオマニアだけでなくギター演奏者にも人気がある模様。ちなみにいつも盛況で賑わっている。実は筆者は店の出先のカゴで売られている格安パーツからお宝を見つけるのが楽しみでたまらない。
ラジオデパートの中はオーディオマニアにしてみればほぼすべてが有名店なのだが、その中から古くからある老舗を一つ。店名は「海神無線」。名前は多少いかついが、親切で物知りな番頭が対応してくれる。店舗の大きさはおそらく一坪くらいで、非常にこじんまりとしている。許可を得て売り場を撮影。
コンデンサー各種。実に美しい。これは日本が誇る一種の芸術、アートである。
部品マニアの私には萌えずにはいれない。ここでは日本を陰で支えるテクノロジーの素晴らしさと同時にカラフルに並んだコンデンサーに機能美を感じぜずにはいられない。
ラジオデパートを右手に歩くとPCパーツを売る店から、携帯販売店やアキバ系がっつり飯の外食店、そしてメイド喫茶から女性が膝で耳掻きをしてくれる耳掻き屋のなどが乱立し始める。まさにカオスの始まり。
この通りはメイド喫茶(今は女子高生スタイルの店が主流)の客引きがチラシを持って等間隔で並び、「ご主人様」の帰りを待っている。その密集度は筆者の感覚ではあの歌舞伎町を超える。ひょっとしたらライトな風俗店(とする)の勢いでは今、アキバが日本で一番HOTな場所ではないだろうか。
アキバといえば「AKB48」を連想する方も多いのではないだろうか。劇場以外にも電気街口駅前にAKBシアターもある。詳細は訪れたことがないので不明。
交通の便の良さからアキバは電子系企業のオフィスビルもたくさん建設されている。駅前にはガラス張りの立派なオフィスビルがある。
このようにアキバは決してAKBとアニメとPCの街だけでなく、ガラス張りの高層オフィスビルが何棟も立ち、またオーディオをはじめとするマニア向け部品の専門店街でもあるのだ。そして外国人をターゲットにしたようなライトな風俗街としての一面をも垣間見ることができる。今、アキバは一種のカオス的な様相を呈しているのである。
Arthur:あだちたかや